札幌馬主協会

コラム

「2025年フレッシュマンサイヤー検証」

 初年度産駒が2025年にデビューするフレッシュマンサイヤーの検証をお届けしたい。それはすなわち、一連の2歳トレーニングセールに産駒が初めて登場する種牡馬の考察を意味する。北米では3月11日からのOBS3月セール、欧州では4月16日からのタタソールズ・クレイヴンセールを皮切りに、今年の2歳セール・サーキットが開幕するが、ご購買をご検討の皆様の参考になれば幸いである。
 米国供用馬で、初年度(22年)の種付け料が最も高かったのは、ダーレーにて7万50000ドル(約1178万円)で供用されたエッセンシャルクオリティ(父タピット)だった。2歳時にG1ブリーダーズCジュヴェナイル(ダート8・5F)を含む2つのG1を制して最優秀2歳牡馬となり、3歳時にもG1トラヴァーズS(ダート10F)など2つのG1を制して最優秀3歳牡馬になるという、輝かしい戦績をあげた同馬。24年に北半球で開催された1歳市場では、68頭の初年度産駒が種付け料の約2・4倍となる平均価格18万0591ドル(約2835万円)で購買され、マーケットの評価も上々だった。ちなみに、同年のJRHAセレクトセールに上場された父エッセンシャルクオリティ・母レッドラークの1歳牡馬は、9200万円で購買されている。
マーケットにおける評価がさらに高いのが、ヒルンデイル・ファームスにて種付け料5万ドル(約785万円)でスタッドインしたシャーラタン(父スパイツタウン)だ。22年のファシグテイプトン・ノヴェンバーに上場されたシャーラタン受胎牝馬7頭のうち、5頭が平均価格52万7千ドル(約8274万)で購買されて関係者の注目を集めると、24年の北半球における1歳市場では、3頭のシャーラタン初年度産駒がミリオンを越える価格で購買され、平均価格は種付け料の5倍近い24万8627ドル(3903万円)に達するという、好調な売れ行きを示した。現役時代の同馬は、球節に不安を抱えていたため5戦したのみだったが、6馬身差で制したG1アーカンソーダービー(ダート9F)、7か月半の休み明けだったにも関わらず4馬身半差で制したG1マリブS(ダート7F)など4勝をマーク。その圧倒的なスピード能力は、種牡馬としての大きな魅力となっている。また、北米供用馬では、24年の1歳市場における初年度産駒の平均価格が、初年度種付け料(4万ドル=約628万円の5倍近い19万7589ドル(約3102万円)に達した売却率も83.2%という上々の数字をマークしたマックスフィールド(父ストリートセンス)も、注目の若手種牡馬と言えよう。
 22年に欧州でスタッドインした新種牡馬で、マーケットで長打を連発しているのが、クールモアスタッドにて6万5000ユーロ(約1047万円)で種牡馬入りしたセントマークスバシリカ(父シユーニ)だ。22年のタタソールズ・ディセンバーで、セントマークスバシリカを受胎しての上場だった重賞入着馬ラヴイズユーが140万ギニー(2億8280万円)で、同じくセントマークスバシリカを受胎しての上場だった重賞勝ち馬の母アーチエンジェルガブリエルが80万ギニー(約1億6160万円)で購買され、関係者の注目を集めた後、初年度産駒が1歳となった24年、アルカナ・オーガストに上場された母プルデンジアの牝馬が170万ユーロ(約2億7370万円)、タタソールズ・オクトーバーに上場された母ロンジナの牡馬が95万ギニー(約1億9190万円)で購買されるなど、高評価を受ける初年度産駒が複数出現。購買された58頭の平均価格も19万8552ギニー(約4011万円)という、高い水準に達している。2歳から3歳にかけて7Fから10.5FのG1を5勝し、3歳時には無敗で欧州年度代表馬の就いた同馬。産駒のデビューが楽しみな種牡馬であることは、間違いない。
 欧州供用の新種牡馬で、穴馬的な存在をあげるとすれば、ヴィクタールドラム(父シャマーダル)になろうか。2歳時にG1ジャンルクラガルデル賞(芝1600m)、3歳時にG1仏二千ギニー(芝1600m)を制した後、ロジ牧場で種牡馬入りした同馬。初年度の種付け料は1万5000ユーロ(約242万円)と、さほど高額ではなかったが、24年のアルカナ・オーガストに上場された母リリエンブルームの牡馬が42万ユーロ(約6762万円)で、同年のアルカナ・オクトーバーに上場された母アラカナの牡馬が同じく42万ユーロという高値で購買され、ロングヒッターぶりを見せつけた。1歳市場における初年度産駒の売却率も83.75%と高く、注目度が急上昇している若手種牡馬と言えよう。欧州では、ダルハムホールスタッドにて5万5000ポンド(約1051万円)で供用されたパレスピーア(父キングマン)も注目の1頭だ。現役時代の成績は11戦9勝。3歳、4歳時に連覇したG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)を含めて5つのG1を制した同馬。24年の1歳市場では、目を引くような高額で購買される馬は現れなかったが、交配された牝馬のうち上質なものの多くはマクトゥーム家による所有馬だったため、そうした牝馬の産駒は市場には出てこなかったというのが実情だ。キングマンの直仔は日本でも動いており、その後継馬としてのパレスピーアは、日本人も充分にマークする必要がありそうだ。
(*編集部注/1㌦=157円、1ユーロ=161円、1ギニー=202円、1ポンド=191円で計算)