札幌馬主協会

お知らせ・イベント

海外競馬の愉しみ方 :浅沼博幸氏

 幸運なことに、今年もまた愛馬デルマソトガケとともに米国ブリーダーズカップに参加することができました。期待したほどの結果は残せませんでしたが、音無秀孝調教師はじめ関わってくれたすべてのスタッフ、騎乗してくれたC・ルメール騎手には深く感謝したいと思います。この場を借りて、御礼申し上げます。

 今回のブリーダーズカップは、デルマソトガケにとっては7度目の海外重賞挑戦でした。14戦目、彼の競走人生においてはちょうど半数が海外での競馬となります。「なぜ、海外で出走させるのか」という事を、よく聞かれます。

 その理由は1つではありませんが、最も大きな理由は、デルマソトガケは日本のダートコースよりも、海外のダートコースの方が能力を発揮できると、音無先生が判断してくださったからです。一昨年暮れに、全日本2歳優駿を勝たせてもらったあと、先生の方から中東遠征の話を持ち掛けられました。みなさまご存知のとおり、ダート競馬を得意とする馬にとって3歳春はレースの選択肢がそう多くはありません。今でこそ、南関東という選択肢もありますが、JRA所属馬にとっては狭き門。デルマソトガケの時代は、半年後のユニコーンステークス、あるいは兵庫チャンピオンシップに備えるか、月に1度組まれているオープン特別競走に出走させるしか選択肢がありませんでした。幸いなことに馬は元気で調子も良いとのこと。もともと海外に対するあこがれが強く、旅行が大好きで、リタイヤ後のセカンドライフを謳歌しようとしていた私にとっては、とても魅力的なお話しでもありました。サウジダービーは松若騎手が巧みにインコースを立ち回って3着でしたが、音無先生からは「サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場のダートコースよりも、UAEダービーが行われるアラブ首長国連邦メイダン競馬場のダートコースの方がデルマソトガケに合っている」というお話もありましたので、密かに楽しみにしていたところ、馬はそうした期待に見事応えてくれました。私にとっては初の海外重賞制覇であると同時に、2019年4着デルマルーヴルの雪辱戦にもなりました。表彰式での感激は言葉になりません。

パドックを周回するデルマソトガケ

 私が海外のレースを好むもう1つの理由は、出走馬主をとても大事にしてくれるからです。先頭の馬がゴールした次の瞬間、テレビカメラは馬主と調教師を映します。日本では考えられないことです。また、例え思い通りの結果にならなくても、アメリカでもドバイでもサウジアラビアでもレース前日にはレセプションパーティが開催され、海外の著名なオーナーと親交を深めることができます。また、ドバイでは専用の運転手まで用意していただき、まるで王様になったような気分を味わうことができました。そんな気遣いも嬉しいものです。ただ、欧州は平気でスクラッチ(出走取消)するので、そこは残念な部分でもあります、

 あまり英語が得意ではない私ですが、UAEダービーの表彰式に立てたおかげで、ケンタッキーダービーのレセプションパーティでは多くの方から声を掛けていただきました。そういう場に居られることは馬主にとって最大の名誉であり、レースの勝ち負けとは別の満足感を味わう事ができました。 

 とくにケンタッキーダービーは町をあげてのお祭りムード。ゲートが開いてしまえば2分少々でレースは終わってしまいますが、前日の夜からとても長い時間〝ケンタッキーダービー〟を楽しむことができました。簡単な事ではないと思いますが、家族、友人とともにあの雰囲気の中にもう1度立ってみたいというのは正直な気持ちです。

 言うまでもなく、日本の馬は強くなりました。これは生産者はじめ育成、調教に携わるすべての方々、そして騎乗技術などすべてがレベルアップしたからだと思います。おかげで私たちは、これまで経験したことがないステージに立つことができるようになりました。 その後、デルマソトガケは23年のブリーダーズCクラシックで2着。世界最高峰レースでも臆することなく頑張ってくれました。過去、多くの日本生産馬、日本調教馬が跳ね返され、近年では挑戦することすら無くなっていた格式高いレースで、参加する喜びだけではなく、勝ち負けの興奮を与えてくれました。レース直後は2着で満足という気持ちでしたが、やはりあそこまでいったなら、そのリベンジを果たしたいという思いがないと言えば嘘になります。しかし、現実的には今後、私がデルマソトガケを超えるような馬と巡り合う可能性はほとんどないとも考えています。ですから、もう少しこの馬と一緒に競馬を楽しみたいと思いますし、海外遠征を考えているオーナーがいらっしゃいましたら、経験されることを強くお薦めしたいと思います。

デルマー競馬場にて

ブリーダーズCが行われたデルマー競馬場馬主席からコースを臨む

武豊騎手と

シンガポール競馬の廃止

 シンガポールの競馬が10月5日の開催をもって廃止された。

 シンガポールといえば、シャドウゲイトやコスモバルクが国際競走を勝ったことが日本のファンには記憶されているだろう。国際競走は2015年まで実施されていた。そこから10年経たずに廃止である。崖を転がり落ちたようなこの事態は、どのように起きたのだろうか。

 筆者は現地在住だったわけではないし、各種資料を原語で読んできたわけでもない。ただ、シンガポール競馬との関わりはそれなりに持ってきた。細部まで正確ではないかもしれないが、おおむね合っているはずという形で経緯をご説明したい。

180年の歴史に終止符を打ったシンガポールターフクラブ

シンガポール唯一のクランジ競馬場

 最初の躓きは2010年、シンガポール国内に2つのカジノが開業したことだ。国土の狭いシンガポールゆえカジノに行くことは簡単で、しかも彼の地のカジノは入場料があるとはいえ年間パスが設定されている。競馬がカジノに「食われた」のは自然なことだった。

 問題はその先である。シンガポール政府は基本的に競馬に冷淡で、ネット投票の許可範囲は狭かった。国民の中にもオンライン賭事への嫌悪感があるようで、そのあたりは日本と事情が異なる。

 焦ったシンガポールターフクラブ(STC)が打った手は縮小均衡で、「ベッティングセンター」と呼ばれる大~中規模場外発売所はそれなりに残したものの、コストカットと称して「ベッティングアウトレット」という小規模場外を、1箇所を残して閉鎖してしまった。代わりにシンガポールプールズという、宝くじやサッカーくじを販売する窓口で馬券を売るようになったのだが、買って帰るタイプの宝くじ・サッカーくじと、映像を見ながら反復的に賭ける馬券では事情が異なりすぎる。当然売り上げ減に拍車がかかった。

 最終的には競馬のうち馬券発売(ウェイジャリング)部門を分離してシンガポールプールズに全面委託することとなった。競走と賭事が一体化している体制(まさにJRAのような)のほうがベターというのは世界的に競馬の常識だが、その逆をいったわけである。唯一、シンガポールプールズに移管するメリットはブックメーカーのような固定オッズの提供だったのだが、それが広がることもなく、ネット投票も広がることはなく、競馬は緩やかに衰退していった。

パドックから本馬場へ向かう

幾多の熱戦が繰り広げられた競馬場跡地は政府に返還されるという

 シンガポール競馬の廃止は宅地開発のため政府に敷地返還を要求されたというのが建前だが、ありていに言えば「政府に潰された」というのが実感に近い。

 ただ、STCという組織の実力にももともと疑問符がついていた。役員クラスが中途採用で来て悪手を連発してまた転職していくようなこともあった。筆者は国際サイマル関係でSTCとやりとりしていた時期があったが、その時のウェイジャリング担当バイスプレジデントも、気が付けば居なくなっていた。

競馬場内では多くのファンが馬券を楽しんでいたが

ここ数年は、入場者数の減少に悩まされていたという

 さて、皆さんが気になるのは日本でIR・カジノが広がると、同じようなことが起こりうるのかということだろう。

 筆者は当面は楽観的に考えている。JRAという組織の実力とブランドは世界トップレベルのものだ。池上の東京競馬会や安田伊佐衛門の時代からこの強固なシステムを築いてきた人々に対し、競馬関係者はもっと感謝の念を持ったほうがいい。

 日本ではカジノができても、そこに日々アクセスできる人口は日本人全体のごく一部である。しかも現状では入場料が設定される一方、年間パスの話は出ていない。地理+費用を考えるとギャンブル人口における「カジノ入り浸り」は僅かな比率に留まるだろう。

 ただ仮に、オンラインカジノが許可されるとか、最近若者に人気のポーカーがオンライン限定でベッティングありになるとか、スポーツベッティングが合法化されるといったことが起きると話は大きく変わってくる。

 この10年売り上げが増えてきたのは、スマホバブルとコロナバブルのおかけだ。申し訳ない話だが、競技の魅力が増したわけではない。ネット販売という新しい地平が広がったこその売り上げ増だが、これは競馬(に限らず公営競技)にとって神風レベルの話であり、第2弾はない。そして、スポーツベッティングなど別種目がネット上に参戦してきた場合、潮目は悪い方に大きく変わる。

 可能性がいちばんあるのはスポーツベッティングだろう。水原一平氏のおかげで(?)日本のスポーツベッティング議論はいったん沈静化しているが、カジノも推進派の巌窟王的な努力の末に合法化されたわけである。将来ネット上で陣取り合戦が始まる可能性はある。競馬業界を構成するメンバーは、いまのバブルに酔うだけでなく、将来競合が現れた場合でも「大衆に選ばれる競馬」であるよう、考えていかねばなるまい。

 

須田鷹雄氏

当協会会員馬の優勝記録 ‐2024年11月-

開催場 開催日 レース名 馬名 馬主名 生産者 重賞勝利
京都 11月2日 2歳未勝利 アメリカンステージ 吉澤ホールディングス 米国
東京 11月2日 メイクデビュー東京 ボルトテソーロ 了徳寺健二ホールディングス 新冠町・パカパカファーム
福島 11月2日 3歳以上1勝クラス・若手 ソルトブリーズ ゴドルフィン 日高町・ダーレー・ジャパン・ファーム
福島 11月2日 3歳以上1勝クラス ヘヴンリーハンド FAレーシング 新冠町・松浦牧場
東京 11月2日 神奈川新聞杯 グロバーテソーロ 了徳寺健二ホールディングス 日高町・沖田牧場
京都 11月2日 衣笠特別 ロードトラスト ロードホースクラブ 浦河町・宮内牧場
京都 11月2日 貴船ステークス インユアパレス 小林英一ホールディングス 米国
福島 11月2日 フルーツラインカップ エランティス ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン 新ひだか町・谷岡牧場
京都 11月3日 メイクデビュー京都 インブロリオ ゴドルフィン 日高町・ダーレー・ジャパン・ファーム
福島 11月3日 河北新報杯 クロースコンバット 吉田勝己 安平町・ノーザンファーム
東京 11月3日 錦秋ステークス ウェイワードアクト ゴドルフィン 米国
福島 11月3日 3歳以上1勝クラス アメリカンマーチ 吉澤ホールディングス 米国
佐賀 11月4日 JBCクラシック ウィルソンテソーロ 了徳寺健二ホールディングス 日高町・リョーケンファーム
京都 11月9日 2歳未勝利 フェニーチェドーロ 下河辺隆行 日高町・下河辺牧場
京都 11月9日 メイクデビュー京都 ナルカミ ゴドルフィン 日高町・ダーレー・ジャパン・ファーム
京都 11月9日 メイクデビュー京都 ミニトランザット 谷掛龍夫 千歳市・社台ファーム
福島 11月9日 3歳以上1勝クラス シャカシャカシー 水谷美穂 日高町・木村牧場
京都 11月9日 京都ジャンプステークス スマイルスルー 吉田勝己 安平町・ノーザンファーム
東京 11月9日 3歳以上2勝クラス セフィロ 村野康司 千歳市・社台ファーム
福島 11月10日 2歳未勝利 ジェットブレード 岡田牧雄 新ひだか町・岡田スタツド
東京 11月10日 2歳未勝利 ソードマスター 社台レースホース 千歳市・社台ファーム
福島 11月10日 障害未勝利 キタノブレイド 北所直人 新冠町・長浜忠
福島 11月10日 障害未勝利 ゴールドブリーズ 居城寿与 新冠町・北勝ファーム
東京 11月10日 3歳以上1勝クラス ホウキボシ ゴドルフィン 愛国
福島 11月10日 3歳以上1勝クラス レッセパッセ ビッグレッドファーム 新冠町・ビッグレッドファーム
京都 11月10日 3歳以上2勝クラス ヘルモーズ 吉田勝己 安平町・ノーザンファーム
福島 11月10日 福島記念 アラタ 村田能光 千歳市・社台ファーム
東京 11月10日 オーロカップ ゴールデンシロップ ゴドルフィン 愛国
東京 11月10日 3歳以上1勝クラス ユキワリザクラ 松村真司 新ひだか町・神垣道弘
京都 11月10日 ドンカスターカップ フルメタルボディー 社台レースホース 千歳市・社台ファーム
京都 11月16日 2歳未勝利 ベイラム 社台レースホース 千歳市・社台ファーム
京都 11月16日 2歳未勝利 フォーキャンドルズ 吉田照哉 千歳市・社台ファーム
東京 11月16日 3歳以上1勝クラス ミラーオブマインド 社台レースホース 千歳市・社台ファーム
福島 11月16日 高湯温泉特別 アイキャンドウイッ 吉澤ホールディングス 新ひだか町・岡田スタツド
東京 11月16日 南武特別 ラスカンブレス 吉田勝己 安平町・ノーザンファーム
京都 11月16日 秋明菊賞 キャッスルレイク ロードホースクラブ 新ひだか町・ケイアイファーム
東京 11月16日 3歳以上1勝クラス ナファロア 村野康司 千歳市・社台ファーム
福島 11月17日 3歳以上1勝クラス ポワンキュルミナン 吉田照哉 千歳市・社台ファーム
福島 11月17日 障害未勝利 パープルアドミラル 岡田牧雄 新ひだか町・聖心台牧場
福島 11月17日 3歳以上1勝クラス・牝馬 ティンク 社台レースホース 千歳市・社台ファーム
福島 11月17日 福島民友カップ テーオードレフォン 小笹公也 日高町・Wing Farm
東京 11月17日 霜月ステークス ロードフォンス ロードホースクラブ 新ひだか町・ケイアイファーム
福島 11月17日 3歳以上1勝クラス マサノカナリア 猪野毛雅人 新ひだか町・猪野毛牧場
東京 11月23日 2歳未勝利 ソーダーンライト ゴドルフィン 愛国
京都 11月23日 メイクデビュー京都 ワイルデンウーリー ゴドルフィン 米国
京都 11月23日 3歳以上1勝クラス ホルトバージ YGGホースクラブ 浦河町・谷川牧場
東京 11月23日 3歳以上2勝クラス ミラビリスマジック 社台レースホース 千歳市・社台ファーム
京都 11月24日 メイクデビュー京都 セボンサデッセ フィールドレーシング 安平町・ノーザンファーム
京都 11月24日 3歳以上1勝クラス キングブルー TNレーシング 新ひだか町・千代田牧場
京都 11月24日 清水ステークス ビヨンドザヴァレー 社台レースホース 千歳市・社台ファーム
京都 11月24日 カノープスステークス ホウオウルーレット 小笹芳央 新ひだか町・岡田スタツド
中京 11月30日 2歳未勝利 フルドド 中村祐子 新ひだか町・ケイアイファーム
京都 11月30日 2歳未勝利 ヴァンアグレアブル 吉田勝己 安平町・ノーザンファーム
京都 11月30日 3歳以上1勝クラス シャンデルナゴル 吉田勝己 安平町・ノーザンファーム